公認会計士・税理士　萩谷孝男事務所

青色申告を行う個人事業主にとって、キャッシュフローの管理と経営分析は一筋縄ではいきません。不動産所得や給与所得といった複数の所得区分が絡み合うため、法人経営とは異なる独特の視点が求められます。この複雑さを解消し、効率的な経営を実現するための具体策をお伝えします。
　まず重要なのは、事業所得と他の所得間のお金の流れを明確にすることです。不動産所得や給与所得から事業へ資金を移動させる場合、それを「事業主借」として記録します。一方、事業所得から生活費への支出は「人件費」として分析し個人使用分の支出は「事業主貸」とします。私がこのように分類するのは、法人の経営分析指標に合わせるためです。
　さらに、費用の区分けも個人事業主特有の課題です。たとえば、電気代や電話代といった共通費用は、事業使用分を必要経費として計上し、個人使用分は事業主貸として処理します。これにより、事業の純粋な収益性を正確に把握できます。また、減価償却費も同様に事業分を正確に仕分けることで、事業の資金繰りに対する影響をを可視化できます。
　固定資産購入については貸借対照表に計上されるので、たとえ個人使用分があっても全額投資キャッシュフローにします。
　個人事業主のキャッシュフロー管理では、年度ごとの元入金と所得や事業主貸・事業主借との精算があるので総資本はめまぐるしく変わる可能性があります。
　その結果、経営安全率や自由資金比率はある程度法人の指標に合わせやすくなっても、自己資本比率が法人の指標と変わってくると思います。
　このように青色申告を行う個人事業主にとって、キャッシュフローの管理と経営分析は手強いといえます。不動産所得や給与所得といった複数の所得区分が絡み合うため、法人経営とは異なる独特の視点が求められます。
※青色個人事業主の計算書分析において、経営安全率や自由資金比率に生活費を考慮することは私の個人的な分析手法です。従いまして、他の方法を否定しているわけではありません。